音楽のある生活(前編)




これを聴きながら読んで欲しい。


かつては部屋の中でもクルマの中でも常にそこに音楽があった。いつの頃からだろうか。結婚してから?子供が生まれてから?いつの間にか音楽はヘッドフォンで聴くことが普通の生活になった。


小学校の頃は枕元にラジオがあって、夜は寝るときにもラジオを聞いていた。音楽の時もあれば、DJのおしゃべりのときもあったし、AM局の時もあればFM局の時もあった。中学のときにはFMから自分のカセットテープに録音した音楽が中心だった。そう、当時はこれをエアチェクって言ったっけ。カセットテープもたくさんの種類があって、特に好きな(=重要な)アーティストの録音にはちょっと高めのテープをチョイスした。クロームテープとか、メタルテープとか。本当には音源が何かでテープをチョイスすべきなんだろうけど、僕の音楽に対する価値観でチョイスされていた。だから、アイドルの曲にメタルテープで、映画のサントラにノーマルテープなんてことは当たり前だった。その頃は夜だけじゃなく、タイマーをセットして目覚まし代わりに好きな曲がかかるようにしていた。


高校生になると聴く曲やアーティストは変わったけどライフスタイルは一緒だったかな。変化があったとすれば、ちょうどウォークマンが世の中に登場した頃で、僕はWalkmanIIを持っていた。でも、今みたいにインナーイヤー型のヘッドフォンがあるわけじゃないので、ヘッドフォンがかさばることが嫌で、ウォークマンはいつも『お供』では無かった気がする。それよりも、自分の部屋で自分のオーディオを聴く方がはるかに心地よかった。よく親父に『うるさい』と怒鳴られたりもした。


大学時代の前半はまだ自宅だったのでオーディオセットを刷新した。アキバのオーディオ通販をローンで頼んで、アルバイトの収入をその支払いに充てたと思う。やがてアルバイトの収入は『クルマのため』に変化していった。当時のカーコンポは今の高級ナビのように高価で、当然僕には手が出なく、安価なカーステ(当時は価格と言葉が1対1だったような気がする)を取り付けていた。最初はクルマにラジカセを積んでいたぐらい、そこまでお金が回らなかった。


社会人になると給料でかなりのCDを買い漁った。ジャンルは主にR&Bやブラコン、ダンス、ヒップポップとブラックミュージックが中心だった。電車の中とかではほとんど聴かず、もっぱらクルマの中がリスニングルームになっていた。入社直前に買ったホンダのプレリュードは純正でもそこそこの音楽が聴けて、どこかに行きたいからクルマに乗るのか、音楽を聴きたいからクルマに乗るのか分からないような感じだった。R32の時には納車になって直ぐに純正を外して、ADDZESTで『マルチ』にした。イコライザもナビもなしで60万以上だったと思う。スピーカー用のボードは特注で、アンプは6台をトランクに乗せて、アンプとスピーカーが1対1になるようにした。今の時代と照らし合わせれば馬鹿な投資というか出費だけど、当時は好きな音楽を全身で浴びられる空間だったので心底満足していた気がする。