何を伝えたくて作ったのだろう 『雨よりせつなく』


"雨よりせつなく [DVD]" (当摩寿史)


正直に言えば何を伝えたかったのかがよく分からない作品。ストーリーとかではなく、作り手はこの映画を通して伝えたかった『何か』が全く見えない。原作の吉元由美氏の『雨よりせつなく』を読んだのでこの作品を見てみようと思ったわけだけど、ストーリーは全く違うし、モチーフも取って付けたような部分だけ。どう見ても素人が撮った自主製作映画に見える。


特別なキャラではなく、ごく普通の(このごく普通の定義は曖昧だけど)都会に住む30代を描いたにしては現実的な部分と現実感がない部分がごっちゃになっている。『ごく普通』はそういう生活を制作者側がそうでないから難しいだろう。セリフを極力減らし、雰囲気だけで通すには通常の映画の長さはちょっと辛い。


そもそもこの『雨よりせつなく』はANRIの曲が最初で、次に吉元由美氏の小説になり、この映画になっているわけだけど、『原作』って書かなくてもいいぐらいに内容がかけ離れている。TVとかでも原作と作品が大きく違うことがあるけど、『原作』って書く必要があるのか、と思ってしまう。モチーフを利用しているとか、作家がアドバイザーになっているとかであればそう書けばいいし、ストーリーが全く違うもので『原作』と書いて見る側に誤解を招くような結果になるのであれば、違うタイトルの方がいいと思うんだけど。


もう一言書くと、大本となる曲があるのにその曲を使わないのであればタイトルも違うものにした方がいい。