やっと見つけた大沢在昌作品 『深夜曲馬団』 大沢在昌


"深夜曲馬団(ミッドナイト・サーカス) (角川文庫)" (大沢 在昌)


ようやく見つけた数少ない読んでいない大沢在昌作品。単行本が出た時期が1990年4月だから僕が社会人になった時だな(随分と昔の話だ)。まだまだ世の中はバブル真っ只中で、この小説に出てくるようなドライなものが受けた時代だった。この『深夜曲馬団』はハードボイルド短編が5つ書かれている。心の揺れや結末などはあまり考えず、ただただ描写を繰り返すことでドライに、残りは読み手が補うような感じで書かれている。決して嫌いな作風ではないし、むしろ中学・高校時代には片岡義男のこのテイストの文章ばかりを読んでいた。最近はこのテイストの文章を書いていない大沢氏だからこそ、新鮮味がある。


まるでデザートのように 「鏡の顔」傑作ハードボイルド小説集 大沢在昌 2009-10-19

3ヶ月前に読んだ傑作集のタイトルにもなっている『鏡の顔』は今回読んでも出来映えがいいと思った。一人は銃で、一人はカメラで『一瞬』を仕事にしてきた二人の男が鏡越しにお互いを見たことで始まる緊張感は短編とは思えない奥行き感がある。『空中ブランコ』はタイトルは裏腹に諜報の世界で生きてきた誇りと愛を描ききっている。『インターバル』はちょっと毛色が違う作品で、『深夜曲馬団』の中でのインターバルの役割も果たしている。『アイアン・シティ』と『フェアウェルパーティ』は同じ主人公だ。違いはGT-RがRSターボになる。もちろんクルマの話で、スカイラインのこと。分かる人には楽しめる表現も一部ある。自分自身のための補足として、S20とFJ20だったかな(エンジンの話)。

この本の楽しみ方は新宿鮫をすべて読んだ後に読んでみると面白いんじゃないかな。