何か話題になっているようなので



 ――最近の安さ、早さを求める傾向への抵抗でも?

 

 若い人たちが考えたり作ったりする楽しみや必要性を忘れていくのが心配なのです。たとえば、ジーンズ1本が何百円なんてありえない。どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服を着ていていいのか。いい物には人の手も時間も努力も必要だからどうしても高くなる。いい物は高いという価値観も残って欲しいのです。

asahi.com 2009年12月21日 『いい物は高いという価値観も… 川久保玲』より

この発言が物議を醸しているんですね。発言のある部分だけを取り上げて物事を議論するものどうかと思うし、そもそも活字になっている時点で編集が入っているわけだから発言者の川久保玲の真意とは違うものかも知れない、と読み手側が理解して読む必要があるだろう。でも、ある部分だけが一人歩きしてしまうんでしょう。

 

今回の発言に関してではなく、1000円しないジーンズの話だけどマーケットに支持されているということは明らかにその市場が存在する、ということだと思う。消費者の目線で言えば、ファッションとしてジーンズをはくだけではなく、元々の目的のように作業用として利用している人が多く、そこそこ丈夫であれば安価な方が助かる、と思っている人が多いということだろう。そこにデザインや機能を求めれば、もっと価格が上がることは避けられないだろうが・・・・。ユニクロの話だけど、僕はこの1000円未満のジーンズを購入していないし、店頭でも見ていないのでコメントする立場ではないけど、正直な感想としては『凄い』の一言。果たしてこれで儲けが出ているかどうかは別にして、話題を作り、確実に店舗に顧客を呼び込んだことは間違いないのでマーケティングとしては成功だと言える。売上を作るのはまた別の話である。つまり、マーケティングの基本的な役割として、『ニーズがある見込み客を集める』という部分は確実にこなしている。

 

川久保玲の話。僕は今まで一度も『コムデギャルソン』を買ったことがない。今はともかく、若い時にも買わなかった。僕の青春時代はDCブランドブームの頃なので、当時のBIGI、Nicole、山本耀司三宅一生菊池武夫と経験しているけど、『コムデギャルソン』だけは購入したことがない。理由は簡単で価格と品質がアンバランスだったからである。確かにカッティングのデザインは斬新だったけど、生地と縫製を考えると価格に見合っていなく、デザイナーのエゴしか感じなかった。僕は『ブランド=信用』だと思っているので、『コムデギャルソン』は信用に値しなかった、というだけだと思う。ちなみに過去に店には何度も行ったことがある。

 

服には気持ちを変化させる一面が実際にあると思う。そう感じたのは『ジャン=ポール・ゴルティエ』と『三宅一生』の服。着た人にしか伝わらないものがある。どちらも着ていて本当に着心地が良かったのが共通点。『いいものは高い』という絶対的なものではなく、手にした人が感じる相対的な価値(価格ではなく)が高いか安いか、という話なのではないだろうか。