僕らには本当の意味はきっと分からない 『グラン・トリノ』


"グラン・トリノ [DVD]" (クリント・イーストウッド)


グラン・トリノ』を今回のiPhoneを使って通勤時間に観た。レンタルのDVDとしては結構人気らしかったので、内容を全く見ずに借りてみた。内容は、朝鮮戦争で心に傷を持った老人 コワルスキーは周りからも偏屈者扱いされながら隠居生活をしている。妻に先立たれ、独りぼっちになりながらも意志を曲げず、自分が信じるものだけに心を許し、まるで彼のガレージに眠る『グラン・トリノ』と同じような恐竜のようになっていた。

隣にはモン族の家族が住み、その一人タオが不良仲間から唆され、コワルスキーの『グラン・トリノ』を盗もうとして失敗することで出会うことになる。古い軍人仲間以外には心を開かなかったコワルスキーがタオの姉スーと接してから変化が訪れ、やがてタオにも心を開き、最後に長年抱えていた重荷を下ろすことができた。

 

映画そのものの評価はネット上のいろいろなところにあるので、敢えてせず、ちっと違った見方をしてみたい。

まずストーリーのフレームだけを考えると桂望実の『ボーイズ・ビー』に似ている。頑固職人の老人が小学生の少年との対話で心を開いていく有様を描いている。


関連


"ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫)" (桂 望実)


 

次に根底に流れる思想はロバート・レッドフォードが監督を務め、ウィル・スミスが主演した『バガー・ヴァンスの伝説』を思わせる。


"バガー・ヴァンスの伝説 (特別編) [DVD]" (ロバート・レッドフォード)


 

戦争で心の傷を負ったゴルファー(マット・デイモン)がバガー・ヴァンス(ウイル・スミス)と出会い、彼をキャディして試合に臨みながら心に変化が顕れる部分が非常に近しい。『戦争』はどちらにも出てくるキーワードではあるが、それ以上に2つ映画に共通するのは宗教観である。

正直、僕らには理解できない部分だと思っている。生活や社会規範が宗教に縛られてる世界というのは、日本で生まれ、日本で育った環境では頭では理解できるものの、身体では理解できないと思っている。きっと、僕らが感じたこと以上に米国では感じるものがある作品なのではないか、と想像している。

僕個人としては、『バガー・ヴァンスの伝説』の方が好きで、『グラン・トリノ』を"良い"と感じた人で『バガー・ヴァンスの伝説』を見ていない人は是非ご覧になった方がいい。こう書いた理由が分かるはずだ。