セルフプロデューサ『小泉今日子』


電車の中の広告で『小泉今日子』を見かけた。明治のチーズの広告だ。食品広告のキャラクターは『清潔感』や『親しみやすさ』のイメージがあるかどうか、という判断基準で選択されることが多いから、彼女は四半世紀以上、そのイメージを維持していることになる。

 

彼女のデビューは僕が高校1年の時なので27年前である。アイドルとしてデビューし、それまでとは違う彼女らしいアイドルを定義した。普通、それぐらいのブームが起きるとその後は衰退し、忘れ去られるものなのに彼女はその時代その時代で自分らしさを十分に引き出しながらずっと地位を維持し続けている。とはいっても、スキャンダル的なものが無いわけではなく、過去には恋愛ネタでいろいろ報道されたり、離婚経験もある。しかし、それらも含めて彼女らしさにしてしまっている。

 

僕は彼女のアルバムで『Hippies』が好きで、今でもたまに聴く。


"Hippies +2(紙ジャケット仕様)" (小泉今日子)


このアルバムは豪華なメンバーで制作されている。さらに『小泉今日子』プロデュースという作品でもある。例えば1曲目の『3001年のスターシップ』の作曲は氷室京介で、氷室自身も『Love & Game』という曲でセルフカバーしている。どちらがいい、というような下世話な比較対象ではなく、同じ曲を小泉だから、氷室だから、と言えるような仕上がりになっている。実際、『3001年のスターシップ』の曲を聴けば氷室の作曲と分かるぐらい特徴がある作りなのに、彼女のものにしてしまっている。シングルとしてリリースされている『木枯しに抱かれて』はご存じ、高見沢俊彦の曲。この曲も聴けば高見沢の曲とすぐに分かるぐらい分かりやすい曲である。つまり、それぞれ個性的な曲も変幻自在にこなしてしまう能力がある、と言えよう。

 

ある一時期はCM女王として、数々のCMに登場した。特に印象に残っているのはJR東日本のCMである。完全に小泉色になっている。


 

逆に彼女の『柔らかさ』だけを利用したCMもある。


 

こう見ていくと、彼女のアイドルデビューもセルフプロデュースとして考えた『手段』に見えてくるから不思議だ。きっと自分自身をいろいろ変化させる術を心得ていて、何を求められているかに応えられる能力を持っている、ということだろう。だからこそ、四半世紀以上に渡って輝き続けているヒミツなのだろう。こういうプロフェッショナルは見ていて気持ちがいいし、今後もずっと活躍して欲しいと願う。