なぜ残業が発生するのか? 「「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる」 松本順市
"「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる (幻冬舎新書)" (松本 順市)
この本を手にした時はあまり中身を期待せずに購入した。「なぜ?」と言われても明確な答えがないのだが、「ただ何となく・・・」という感じ。実際に読み出してみると、購入した時の気持ちと同様に目新しさがあるわけではなく、「最後まで読まなくてもいいかな・・・」という気持ちを持ちながら読み進めていた。
しかし、中盤で『残業』の話のところは別だった。書かれているテーマとしては、
- どの企業も「残業」が発生しやすいすれすれの状態にある
- 「残業」が多い組織が儲からないワケ
- 残業の多い会社はボーナスが少ない
- 「サービス残業」が組織を壊す
- 生産性が高い会社は給料が高くなる
などが展開されている。中でも、『どの企業も「残業」が発生しやすいすれすれの状態にある』は「いままでそういう見方をしたことが無かったな」と感心した。その部分を引用させていただくと、
通常は企業規模の拡大に合わせて、人員の追加採用がなされます。先に企業の拡大、つまり仕事量が増加し、それに対応する形で人を採用するということです。
仕事量の増加を前もって予測し、人を採用することはできません。人員に余裕を持たせるということ、それだけ付加価値を生まない「人件費」を増加させることになるからです。付加価値を生まない人件費を増加させてしまっては、企業経営は成り立ちません。
つまり会社組織というのは事業の拡大、成長を前提として運営されているので、構造的に残業が発生するものである、といっています。たしかに僕の経験でもベンチャーのように急成長している会社や部門で仕事をしている時の方が残業している時間が長い、ということが理解できる。
本書は全体を通して『組織』、『収支』、『モチベーション』という切り口で書かれており、読み手の立場に依存せずに分かりやすく、またそれぞれの立場で気づきを与えてくれる文章になっている。まとめとしては「成果主義による弊害」に結びつけられており、人事評価方法に関しても考えなくてはいけないポイントが例を挙げて紹介されている。読み終わってみると、『意外にいいなこの本』という気持ちになる。地味ながらも、良書である証だろう。