ビデオレンタル業界にもパラダイムシフトが起こっている

ビデオレンタル店の売上高8.7%減 主力のDVDが初の減少 『IT + PLUS』2009-11-2

興味深い記事である。これまで成長し続けてきたビデオ・レンタル店が踊り場を越えて下降モードに入りつつある。記事にも言及されている通り、旧作品の低価格化という施策で来店頻度を維持するやり方があまり効果を得られなくなり、虎の子である新作レンタルの価格を下げる、という部分にまで手を染め始めている。実際に近所のTSUTAYAを考えると旧作品のディスカウントは『旧作品の価格を変更すればいいのに』と思うくらい、毎週のようにクーポンが届き、この対象日以外は店舗内の人も少ない、と感じる。
原因として考えられるのは顧客側の選択肢がこれまでの店舗ベースでのレンタルだけじゃなくなってきていることが挙げられる。TSUTAYA自身を考えても、店舗を拠点とするレンタルだけではなく、『TSUTAYAディスカス』という宅配型のレンタルも行っている(会社が違うがグループとして考えれば)。このビジネスモデルは『TSUTAYAディスカス』だけではなく、『ぽすれん』や『DMM』という同業他社も存在する。また家庭のネット環境がFTTH化することでVOD(ビデオ・オン・デマンド)が充実し始めている。VODはFTTHだけではなく、ケーブルTVのデジタル化もけん引している。その背景にはTV放送の地デジ移行の流れによるTV自体のリプレイス、HDDレコーダの普及などが後押ししている。
そうした中、顧客の映像選択肢はレンタルに限られず、多種多様な中から選択できることでレンタルの優位性がほぼ無くなりつつある。特にVODは『見たい時に見ることができる』という衝動買い的なニーズにも対応でき、また『貸出中』ということもない。

原因はそれだけではなく、家庭のネット環境の変化はYouTubeニコニコ動画など新しいメディアの拡大をサポートすることになり、映像選択肢そのもの、あるいは余暇時間の過ごし方に変化をもたらしている。今後を考えるとTwitterなどソーシャルメディアに費やす時間が拡大し、映画やドラマなどのコンテンツに費やす時間がより少なくなる可能性もある。
物理的には1日24時間という枠はすべての人に共通なわけで、睡眠や食事などを除く『自由時間』をみんなで奪い合うことでそれぞれのビジネスに収益が分配される構造になる。TSUTAYAなど同事業複数チャネルでビジネス展開している事業体はチャネル単位での収益を考えるのではなく、マルチチャネルでのサービス提供モデルを構築しないと本丸からビジネスが崩れる危険性がある。サービス提供側の視点ではなく、顧客ニーズ視点でのサービスでない限り、顧客は顧客にならないからだ。顧客側にはより便利な方向に向かっている。これからの勝者は過去の束縛に捕らわれない事業者に軍配が上がる流れだろう。