「面白い」と感じたら大人ですね 「カットグラス」 白川道

カットグラス (文春文庫)

カットグラス (文春文庫)

最近はめっきりと本に絡んだ内容を書いていなかったので本棚を眺めながらこの本と手に取った。確か白川道の作品を初めて読んだのがこの本だったはずである。開いてみると「2001年7月10日 第1刷」となっている。紙も心なしか色が黄色味掛かっている気がする。白川氏としては珍しい短編集で、5つの話が鏤められている。僕の中では二人の天才がいて、一人は亡くなった藤原伊織、そしてもう一人はこの白川氏である。ただし、安定性に欠けるのが玉にキズ。でも、良い作品は痺れるぐらい素晴らしい。
どの作品も違うモチーフで描かれていて、登場する「男」も「女」も本当に魅力的である。最近よく言われる「草食系」とか「肉食系」とかの部類ではなく、「男性」、「女性」でもない。やはり感じで「男」、「女」が一番しっくりくる。
「アメリカン・ルーレット」
ロシアン・ルーレットの逆で、勝者が掛金を総取りできるゲーム。勝負事の中でも気持ちと時間軸の中の気持ち。気持ちの勝ち負けじゃなく、納得できるかどうかが一番大事な部分。
「イヴの贈り物」
最後の願いと最後の贈り物。「法」というルールの向こう側とこっち側。人の気持ちの中にはその線はない。
「カットグラス」
親友との約束。妹との約束。約束を守ることの苦しさ、辛さ。最後にはカットグラスで答えを教えてくれ。
「浜のリリー」
ただの悲しいラブストーリーだったら他の作品を読んでください。大人にしか分からない、共感が得られます。
「星が降る」
新潮文庫はこの作品がタイトル名になりました。血の繋がらない兄弟の結末はどう思いますか。

何か琴線に引っ掛かる感じがするならば、きっと満足してもらえると思います。