広告効果と利益の確保

テレビCM抑制「びっくり効果」 「サトウの切り餅」利益3倍に

この記事はいろいろな意味を含んでいると思うし、メディアの価値が過渡期を迎えている一幕でもある。僕の正直な感想は、過去のCMによる余力と直近での支出を抑えたことによる結果で、長期的には必ずしも同様の結果になるとは限らない、と思っている。ただし、今後はTV CMかどうかは分からないが、対象とする層にリーチできるメディアで効率的に広告を利用していく必要があるし、直接的な効果を期待する部分と中・長期で必要な広告投資の両方が必要だろう。
僕は大学を卒業して、最初の会社は明光商会というMSシュレッダーを販売する会社で仕事をした。1年目の終わりには広報部に異動し、今でいうところのマーケティング領域の仕事をしていた。実は明光商会は結構ユニークなことをしていて、特にTV CM戦略は顕著だった。これは僕が入社する前の話なので、僕よりも上の世代の人たちの方が記憶に残っていると思う。CMの中身は竹村健一さんが「僕なんかこれだけですよ〜」と手帳を見せる→不必要な情報(特に書類)は適切に処分すべき→シュレッダーが必要、という流れ。ただし、竹村さんのインパクトが強くて、このCMの記憶が多い人はいても、シュレッダーのCMだったことを記憶している人があまりいなかった。インパクトが大きかった証拠として、その後、「これだけ手帳」が販売された。しかし、このCMは約1週間しか流していない。では、なぜ多くの人の記憶に残っているのか。理由は年末/年始のスポットにTV CM予算を集中投下させたからなんです。当時は今のようにインターネットがあるわけでもなく、年末/年始には多くの人が自宅や実家で過ごし、みんなで特別番組を見ることがマジョリティでした。そのためこの時期だけすべてのチャネルネットワークで、すべての時間のスポットを打っていたので、多くの人のCM接触回数が多く、結果、「よくCMを見た」に繋がった、というのが事実である。つまり商材とメディア、リーチ方法などを考えた末の手法だったわけである。その後も基本的にはこの路線を踏襲し、バブル崩壊後は会社名の告知よりも商品や活動内容を広めていく必要がある、という判断で、CM予算を削り、プロモーション系に力を入れていた。
つまり「何を」、「誰に」が明確であれば、そのターゲットに対してメディアの選択と利用方法がはっきりするはずである。一般消費者がターゲットでない商材を持っている企業がTV CMをしてもあまり効果は期待できないし、高齢者向けのサービスをネットだけで広告を打っても意味がないだろう。通常、広告予算は企業の経費の中でも大きな割合を占めるので、この記事のようなメッセージになりがちであるが(特に管理系のセクションの人たちのコメントではそうだろう)短期的な現象だけではなく、中・長期で見た場合にもどうなのかをしっかりと検討する必要がある。辛口の突っ込みをすると、「今まで効果測定をしていなかったの?」と思ってしまう。