価格がすべてじゃない。価格とサービス、そして価値観

吉野家ラーメン撤退

このニュースは僕の中では意味が大きい。人が何かを選択する時に「価格は絶対ではない」と感じた。景気後退の流れの中、いろいろなものが低価格路線に走り、一部のスーパーでは300円を切るお弁当も販売されている。消費者の目線で考えれば価格が下がるが、大方の人は消費者の立場もあれば供給者の立場もあるわけで、長い目で見れば販売価格が下がることで供給者としての収入が下がり、デフレ路線に突入する。また価格を重視するあまり、その他のこと(特に食品であれば、安全性など)が無視、あるいは軽視され、リスクも増える可能性がある。
違う見方をすると、モノの判断基準が価格中心になり過ぎれば、新しい技術やサービスの投資するマインドにブレーキが掛かる可能性もある。今回の結果は、価格は重要な位置付けではあるものの、価格と提供されるサービスのバランスが保たれないと成立しない、ということを物語っていると思っている。僕自身は吉野家には行くものの、びっくりラーメンには行ったことがない。ので、想像でしかないが、ラーメンの市場を支えている人たちの価値観には価格以上のものがある、ということだと思っている。最近話題になっているラーメン店は価格よりも中身の方が重要視されていて、そこに共感できないと人も集まらない現象になっている。会社の近所の目黒のラーメン店も流行っている店とそうでない店は極端になっている。一杯のラーメンに対して価格を最重要視する層もいると思うけど、その層の人たちが市場の大きな部分を支えているわけではない、ということも言えるだろう。
市場と価格、という見方以外にも、店舗内でのオペレーションも重要な部分であると思う。吉野家の強みは店舗内オペレーションを徹底して、効率化とサービスレベルの向上を両立させた、という点だと思う。実際に社長の安部さんの言葉を見ても、その辺の哲学を感じる。実際にこれまではそうだったろし、お店に行っても同感できる部分が多かった。最近の都心の店では外国人のスタッフが多く、吉野家の強みの部分が崩れかけてきている気がする。外国人云々の問題ではなく、育ってきた文化の違いや価値観の違い、吉野家に期待する価値観と実態に乖離が発生しているのではないだろうか。
多くの人は価格を重要なモノサシとして持っているが、価格だけがモノサシではなく、価格と提供されるサービスとのバランスを天秤にかけ、サービスの方が上回っている場合に満足を感じるものだと思う。またその店に期待する価値観と実際に提供されるサービスが一致しているかどうかも短い時間の中で感じとっている。個人的には吉野家ファンなので、今回の知見を吉野家にフィードバックして吉野家のオペレーションに生かして欲しいと思う。