「私立探偵・麻生龍太郎」 柴田よしき

私立探偵・麻生龍太郎

私立探偵・麻生龍太郎

柴田よしきのRIKOシリーズ途中に登場した麻生龍太郎を主人公としたシリーズ。RIKOシリーズに比べると暗い感じがないのが特徴。麻生龍太郎と一緒に登場する山内練も闇の部分がほとんど表現されず、まるで人間が持つ多面性を表現しているようだ。
普段の生活でもある一面を捉えて「あの人はこういう人だ」とラベルを貼って説明ことがしばしばあるが、実際には人それぞれいろいろな面を持っており、その人にはその一面しか表に出さないケースもある。だから特別な人でなくても、いろいろな角度からフォーカスを当てるとまるで違う人に思えるようなエピソードも出てくる。
麻生龍太郎は警察官時代から「石橋の龍」と呼ばれるくらい慎重、かつ理詰めで操作にあたる性格だった。私立探偵になった今でもそれは変わらず、彼を頼ってくるかつての仲間は「なぜ敢えて自分に連絡してきたのか」と客観的な視点を常に持った形で考え、そして人に接する。警察官時代、自分一人「本当にそうなのだろうか」という疑問を持ち、自分なりの仮説を立て、検証して、最後には本物の犯人にたどり着く。山内練と距離が近くなってから、生きることへの関心も薄れて、余計にその客観性は増したのかも知れない。
また改めてRIKOシリーズを読んで見るもの良いかも知れない。