「ゆりかごで眠れ」 垣根涼介

ゆりかごで眠れ〈上〉 (中公文庫)

ゆりかごで眠れ〈上〉 (中公文庫)

ゆりかごで眠れ〈下〉 (中公文庫)

ゆりかごで眠れ〈下〉 (中公文庫)

元々、単行本で出版された際に読んだ作品だけど、文庫でリリースされたということで改めて読み直してみた。垣根さん自身が書いている通り「ワイルド・ソウル」とは表裏一体の話。南米で生まれ育った日系2世「リキ」が主人公の犯罪小説に思えるが、実はリキの心を支える愛情がテーマなのではないだろうか。亡き両親、義母、そして義兄弟と過ごした中で育まれたリキの心を。
ちょっと話が飛び過ぎかも知れないが、僕の中ではStarWarsアナキン・スカイウォーカーダース・ベイダーに変貌していくエピソード1〜エピソード3と被るところがある。アナキンは確かにダークサイドに落ちてダース・ベイダーになったが、大好きだった母を守れなかったことへの悔しさ、そして愛情がエネルギーになっていると思っている。そうでなければ、ルークとの戦いであのような結末にはならないだろう。
リキが両親を失った時の悔しさ(もし自分があそこに行かなければ)と両親への愛情が生きるということの最後の砦となり、劣悪な環境下でも生きていくすべを身につけ、必要な力を身につけていくところは何となく同じベクトルを感じる。
「ワイルド・ソウル」を楽しめた方には違う角度から南米を表現したこの作品をお薦めする。