「夜の桃」 石田衣良

夜の桃

夜の桃

今までの石田衣良のテーストとは全く違う作品だ。なんとなくベッドに横になって読んでいる横に子供が近寄ってきたら、そそくさとページを閉じてしまう。
世の中的には成功者の部類に入る4人が出資して作ったBAR「Eat a Peach」を中心に大人の男女関係を描いていく。これまでIWGPなど若年層を主人公とした作品が多い中、単に年齢を上げるだけでなく、あまり描いてこなかったエロスを全面に押し出した仕上がりになっている。
エンターテイメント性や文学的な表現というよりも、日常的なこと(不倫が日常的などうかは疑問だが)を淡々と書いているところが面白い。ある部分に著者の思いを込めてしまうようなことがなく、いつまでも客観視した、ある意味、等距離でストーリーが流れていく。通常であれば、このような流れだと読み手は退屈がちになるもんだが、それがないことを考えると石田衣良の文章力が高い、と言えるのではないか。
最後のシーンは非常に印象的。新しい石田衣良を見つけたければ、ご一読を。