「たいせつなことはみんな子どもたちが教えてくれた」 きむらゆういち

奥さん推薦の本で、僕も読んでみた。想像以上に素晴らしかった。内容が、というよりも多くの部分で共感を得られた。
僕も小さい頃から毎週末に母親の実家に泊まりにいって、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に過ごす時間が長かった。お陰で、僕の子供の頃に覚えた遊びは年齢よりも20年ぐらいのギャップがある。母親の実家は農家だったので、週末といえども普段の日と変わらず、田んぼや畑に行っては邪魔しないように自分なりの遊びをしていた。近所の人たちもまるで自分たちの子供のように付き合ってくれたし、「子供だから」という線を引かずにある意味で対応に扱ってくれた。それが僕のベースになっている気がする。作者のきむらさんも同じように近所の人たちから可愛がられて過ごしたようだ。
きむらさんは大学を卒業した後に「好きなことで食べていけるように」という視点で造形教室を始めた。彼が目指したのは「あき地で遊ぶ子どもたちの集団」と語っている。僕も隣のお兄ちゃんと近所の雑木林の中に「基地」を作ったり、空き地で自己ルール遊びを開発したりして遊んだ記憶がある。今は昔の子どもたちが遊びの材料として使っていたものは、簡単に手に入らない、という。確かにペットボトルや牛乳パックは手に入っても、竹や葉っぱは難しいよね。もう一つ、年が違う子どもたちで遊ぶことで社会を経験したことが大きいと書いてあり、僕も同感。年上から「学ぶ」こと、年下に「教える」ことでコミュニケーションの基本を体験して、結果、身についたのだと思う。兄弟とは違う(兄弟がいないケースも多いかも知れないが)年齢差のある環境は非常に重要なんだと思う。
この本は「文章がうまい」のでもなく、How to本でもないけど、きむらさんの考え方、生き方が本当に素直に表現されている。たくさんの男性諸氏(たとえ父親でなくとも)に目を通してもらいたい一冊かな。