「激流」 柴田よしき

激流〈上〉 (徳間文庫)

激流〈上〉 (徳間文庫)

激流〈下〉 (徳間文庫)

激流〈下〉 (徳間文庫)

久しぶりに「読んだ〜」と感じた柴田よしきの「激流」。文庫上下を一気読み。自然と一気に読ませる筆力にはベテランの醍醐味というか、レベルの高さを感じさせる。ストーリーがすごく凝っているとか、ミスリードさせるような仕掛けがあるとかではなく、何とも言えない安定感というか、落ち着いた流れがある。
中学三年の修学旅行で起きた同級生の失踪事件が20年後にもう一度当時の仲間を引き合わせる。決して忘れたわけではないその事件を知るものから警告とも言える謎のメールが送られ、当時の同級生たちが新たな事件に巻き込まれていく。20年経った35歳のそれぞれの主人公(このストーリーはこの同級生すべてが主人公になっている)が今の現実と20年の歳月による変化、それぞれの苦悩が今の生活を縛っている、といったミステリーとは別の視点からも楽しめるようになっている。
僕の中学時代の修学旅行も京都だったけど、あまり思い出はないな・・・・。寺巡りは当時は全然面白いと思わなかったし(ある程度、年齢がいかないと面白いと思わないと思うけど)、悪ふざけの記憶もない。きっと仲間と他愛もない話で楽しんでいたのでしょう。
柴田よしきの作品は好きなシリーズとそうでないものと完全に分かれるんだけど、これは「当たり」の方だね。