「深淵のガランス」 北森鴻

深淵のガランス (文春文庫)

深淵のガランス (文春文庫)

以前のブログにも書いた通り、既読の一冊ではあるものの今月の文春文庫の新刊で見つけ、何も考えずに購入した。基本的は同じ内容なので(時々、文庫化にあたって大幅な修正が加えられるものもあるけど)前のものを読めば良いのだけど・・・・。まあもう一度読み返す良いきっかけになるので、損はないでしょう。で、今回の文庫版「深淵のガランス」だけど、ピーコの解説と書き下ろしの「凍月」だけで買う価値あり、である。僕の場合、文庫の一番の価値というか、興味の対象はこの解説にある。これが良いか、悪いかで最後の満足感が違ってくる。ダメな解説を載せるくらいなら、無い方がマシ。
書き下ろしの「凍月」は主人公 佐月恭壱が絵画修復師となったシーンである。まさに謎を解き明かす第一章を文庫版に書き下ろしに発表するという贅沢。
もう一度読み返して思ったことはこの「深淵のガランス」は非常に完成度が高いこと。読んだことがあるストーリーにもかかわらず、全くページを飛ばすことなく読み続け、あっという間に読み終え、佐月恭壱には誰が似合うかな、と思い始めている自分自身にふと気づき、気持ちは泥沼状態で、電車に中でニヤついている自分に「ちょっとヤバイ」と思った。それぐらい良いですね。さあ、今後はいつ会えるんですかね、北森作品に。