「ハバナ・モード (Men are expendable Vol.8) 村上龍

ハバナ・モード (Men are expendable (Vol.8))

ハバナ・モード (Men are expendable (Vol.8))

これは村上龍が継続して書いているエッセイのシリーズ第8弾。小説家 村上龍とは違い、なるべくニュートラルな立ち位置で主張する語り口が特長だ。例えば、何かしらの主張をした後に「勘違いしないで欲しいが・・・・」あるいは「誤解しないで欲しい・・・」の枕詞に村上龍自身はどちらの立場を指示するわけではない、と曖昧な表現が続くことが多い。一方、小説の中では確固たる主張が脈々とあり、それぞれの小説で村上龍が何を感じて、何を主張したいのかは読み手ははっきり伝わる。そういった意味では、あるところは同一作家であり、あるところでは別の作家が書いている感覚を受ける時もある。
このエッセイを書いた時期は「13歳のハローワーク」から「半島を出よ」の間とのこと。「半島を出よ」にはものすごい情熱を感じるので、そのアグレッシブは感情をコントロールしながらのエッセイは想像以上に大変だったのはないだろうか。通常、どうしてもその時に一番関心度の高い考え方に引き摺られやすい。そこを出来る限り小説とエッセイは違うもの、というアプローチをしている。またこのエッセイのユニークなところは最初から読んでいくと時系列的に逆(つまり、タイムマシーンで戻っている感じ)になることである。意図的かどうかは分からないが、読んでいると不思議な感じである。
全体的には現メディアの不甲斐なさの指摘が挙げられる。これは村上龍が編集長を務めるJMMでも同様のことを感じる。報道の公共性を詠うのであれば、もっと突っ込んだ指摘をすべきだし、誰も望んでいないようなインタビューをしているのは全くの無駄であると指摘する。僕も同感で、そのためというわけではないが今はほとんどTVを見ない。時間の無駄にしか感じない。
高校生ぐらいの時期にこの本をテキストとしたディスカッションができるような授業が必要であると痛切に思う。