「夜を守る」 石田衣良

夜を守る

夜を守る

上野・アメ横を守るガーディアンの話だけど、アメ横版「スタンド・バイ・ミー」に感じる。池袋ウエストゲートパークという石田衣良の代表作とも違い、月島を舞台とした小説「4TEEN」との微妙に違う。ある意味では今風の下流社会を生きるアポロを中心にしたことで、別のメッセージを伝えたかったのかも知れない。
アポロは昼間レンタルビデオ店でアルバイトしながら、ふとしたきっかけでサモハン、天才、ヤクショのメンバーとアメ横のガーディアンをボランティアで始める。アポロにとってビデオ店でバイトしながら・・・というフリーター生活をすることは望んでしているわけではなく(世の中に望んでフリーターをしている人はいないかも知れないが)、なんとなく自分自身の気持ちの整理ができずにその道を歩み始めてしまった。そんなアポロを中心とするガーディアンが出会う出来事を連作短編の形でまとめられている。ここで面白いのは時間経過とともにガーディアンたちが成長していくストーリーではないこと。そういう意味では読み手を最後まで引っ張っていくエンターテイメント性を持ちながら、従来型の単純な構成にしない、というチャレンジは石田衣良の文章力の高さからくるものだろう(石田衣良の文章は非常に読みやすく、簡単な感じを受けるので、そう思われないことが多い)。個人的には地元やくざの「キャスター」に興味を持っており、彼を視点からのサイドストーリーを期待している。池袋ウエストゲートパークの「サル」とは違ったキャラなので、面白いストーリーが展開できるのではないだろうか。