「残業ゼロ」の仕事力 吉越浩一郎

「残業ゼロ」の仕事力

「残業ゼロ」の仕事力

吉越さんの本はかつて「革命社長」を読んで興味を持っており、トリンプの社長を辞められてからの著作ということで読んでみた。吉越さんと言えば、「デッドライン管理」や「がんばるタイム」という特徴的な仕事方法を全社的に取り組んで連続増収増益に導いた社長ということで、その手法である「デッドライン」などの言葉が一人歩きしている感がある。僕自身も「革命社長」を読んだ時は、この「デッドライン」に対する印象が強く、言っていることは理解出来るが実施/継続していくことは難しい、と感じていた。今回、この本を読んで、「デッドライン管理」は全体の中の一つのパーツでしかなく、全体が見えると分かる→理解できる、というところに至った。
まず吉越さんの基本的なスタンスを理解する必要がある。

仕事、そして人生を楽しむ

この言葉だけだと理解しにくいが、仕事をゲームとして捉え、ゲームなのだから「勝つ」シナリオを進める、「のめり込みすぎない」という。仕事(あるいは会社と読み替えて良いと思うが)とは自己実現や夢などではない、というスタンスである。

活気がないのが「いいオフィス」

普通に考えると疑問を持たれそうな言葉であるが、活気がある社内は生産効率が低いという。ここは非常に納得。仕事で求められるのは「アウトプット」であり、「明るさ」ではない。このアウトプットの効率を上げるための一つが「がんばるタイム」。

「世の中で最も合理的で無駄のない組織といえば、それは軍隊ではないでしょうか。」

この本の中で一番印象的な一文である。別の吉越さんは軍国主義者でもない。ただ「勝つための組織」を考えると軍隊は非常に効率が良く、極限状態の中では「理念」なんてものは必要ない、と言われる。ここの吉越さんのリーダーシップ像が見える。規模の大小ではなく、自分を中心としたヒエラルキーで「会社のためになることはなにか」の基準だけで判断をしていく。途中間違いに気付けば、即修正していく。
多くの仕事術的な本はとかく個人に限った手法に陥りがちであるが、本書はチームや組織を強力にしていく上で、個人の能力をどう高めていくか、という点が大きく違う。また手法というよりも、考え方とそのバックグランドを明確にしている点が素晴らしい。新年最初の本としては間違いなく「当たり」だった。