「サービスの達人たち」 野地秩嘉

サービスの達人たち (新潮文庫)

サービスの達人たち (新潮文庫)

書き下ろしもあるけど、基本的には雑誌に書かれたストーリーをまとめたものなので、楽しめたけどそれ以上でもない、というのが率直な感想。最初の「ロールスロイスを売り続ける男」も、会ったらきっと凄さを感じると思うけど、文脈からはその凄さは感じない。でも雑誌の中の数ページだったら、きっと感動したのだろう。雑誌というメディアの中でのショートストーリーと本として編纂されたものは別のもので、本来ならばもう一度「手」を入れて世に出す必要があるのではないだろうか。
本書とは関係ないが、週末からTVでは派遣の人たちの契約打ち切りのニュースをドキュメンタリー的に流していたものを何度も見かけた。残念なことに数十秒で済む話題を何分もの映像にしているにもかかわらず、メディアは何の提案もアイデアも出していない。本書に出てくるような唯一無二の仕事の達人には不況もあまり関係ないのだろう。その中間でも価値ある仕事はいろいろあるし、価値を作る努力は必要なものでしょう。
そう言えば、取材協力の中に「青山和子」という名前を見つけました。青山二郎氏の最後の奥さんである。これも偶然かな。