「いつかX橋で」 熊谷達也

いつかX橋で

いつかX橋で

これもタイトルで手にした一冊。X橋は仙台駅北側にある東北本線を跨ぐ橋。僕が知っているのは10数年前の転勤で仙台に住んでいた時代。当時、花京院エリアの再開発のまっただ中で、まだまだ怪しさを残した場所だった。さすがにバラックはほとんど無かったが、かつてはそんな町並みだったことが簡単に想像がつく雰囲気だったし、地元の人の話も「かつては・・・・」とよく聞いていた。
この作品の時代は終戦直後で、きっとX橋周辺はかなり怪しいエリアだったのだろう、と思いながら読み進めていた。東北本線を挟んだ東側は駅のすぐ側にもかかわらず、今でも古い町名が残っているはずである。ブロック単位で町の名前が変わっていたはずである。このストーリーはそのタイトル通り、終戦直後のX橋周辺を舞台にした作品であるが、予想以上に狭い範囲で話が展開されている。今歩いても大した距離でもないので、その頃は人が生活する範囲はものすごく狭かったのかも知れない。物語全般ではそれなりに楽しめたが、最低限仙台の土地勘がないと面白味はわかない気がする。それと終盤のシーンはちょっと安っぽい感じ。ちょっと期待していただけに残念。