「虚栄の肖像」 北森鴻

虚栄の肖像

虚栄の肖像

「深淵のガランス」に続く佐月恭壱シリーズの第二弾。北森作品にはいろいろなシリーズがあるが、今回「虚栄の肖像」を読んでみて、このシリーズが重要な位置付けであることを感じた。作者の目線として、一番近いのがこの佐月恭壱なのではないだろうか。
この作品は3話で構成されており、2話は雑誌に発表されたものだが、最後の1話は書き下ろしである。この1話が最後のピースになっていて、全体が完成するような構成になっている。冬狐堂も度々登場するが、彼女がメインの作品に比べると冷血な印象を受ける。文章の表現量が少ないとどうしてもそうなるのかも知れない。
花師と絵画修復師という二つの「表の顔」を持ち、過去の呪縛による苦悩に満ちた佐月恭壱の活躍をしばし待とう。