「分析力を武器とする企業」 トーマス・H・ダベンポート/ジェーン・C・ハリス

分析力を武器とする企業

分析力を武器とする企業

発売後すぐに読んだのにコメントを書いていなかった。仕事柄、何かの仮説を元にマーケティング施策を実施するにあたって「勘」や「経験」ではなく、データから読み取れる「事実」をベースにすべき、と話すことが多い。所謂、データマイニングという技術を使ってその「事実」を突き止めるわけである。しかし、課題が無いわけではない。本書に出てくるSASツールを使いこなせる人材が圧倒的少ない。一番の理由はその努力が報われるポジションがないことである。分析を行うには、統計学の知識、業界あるいは事業の理解、ツールの習得、そしてマーケティングのスキルが必要になる。しかし、これらをすべて満たす人材は非常に稀で、たとえ存在したとしても会社の本流ではないため、長くモチベーションを維持することは難しい。
一方で、景気の先行きが不透明になってきている昨今で、従来の「どんぶり勘定」的なマーケティングではなく、本当にプロフィットを生むセグメントに的確な投資をしようとする機運は高まっている。今後は間違いなく、仮説-検証のプロセスをデータ分析をスピーディーに実施する企業が抜きんでるようになるだろう。重要なことはこのようなプロセスを実施できる組織であると共にそれを理解し、推進するマネージメントの両方が存在するかである。ハードルは決して低いものではないが、2番手、3番手でもチャンスがある部分でもある。