「演じられた白い夜」 近藤史恵

演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)

演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)

この作品は近藤氏の古い作品なんですね。最近の氏の作品から見ると習作的な感じがし、初々しさが感じられます。芝居の稽古に集まったメンバーと日々渡される台本のストーリーがリンクしながら殺人事件が展開される。展開としては何となく素人ぽい感じだが。「臭さ」を感じさせずに最後まで突き進む。
自身が芝居に傾倒していた時期でもあったようなので俳優が持つ「どんなことをしてでもチャンスを掴む」という気持ちを個人的な感情の中でどう行動するか、という部分がリアルに描かれている(本当のところは分からないが)。身近に俳優を生業にしている人物がいないのでよく分からないが、きっと熾烈な競争の中で日々過ごしているのだろう。音楽の世界も同じようなものかも知れない。華やかさはたくさんの犠牲によるもので、その犠牲によって輝くものなのだろうか。見る側の方が気楽でいい。