「闇色のソプラノ」 北森鴻

闇色のソプラノ (文春文庫)

闇色のソプラノ (文春文庫)

北森作品はどれも良く出来ているが、これほど良い意味で手が込んでいる作品はないだろう。蓮丈那智シリーズに登場する製鉄民族に関する民俗学アプローチも含まれ、北森ファンはワクワクしながら最後までいってしまうだろう。でも最後に登場するギミックは予想できなかった。それぐらい練りに練られた作品である。
内容は主人公の女子大生 真夜子が卒論のテーマに謎に包まれた詩人を選択し、その調査を進めていく中で発生する事件とその詩人の謎を紐解いていくストーリーである。解説を読むとこの詩人のモデルは金子みすゞらしい。とにかく蓮丈那智シリーズよりも民俗学的な内容は少なめなので、敬遠していた人はこの作品を読んで再トライしていただくと、北森作品が楽しくなり、民俗学にも興味を持たれるのではないだろうか。