「もしも、私があなただったら」 白石一文

もしも、私があなただったら (光文社文庫)

もしも、私があなただったら (光文社文庫)

気に入った作家の本はとことん読み続ける傾向にある。この白石一文にしてもそう。といっても、5冊目だが。
物語は主人公 藤川啓吾の腰痛シーンから始まる。何もこんなスタートでなくても・・・・思いながら、読み終えてみるとあるシーンの伏線のために必要だったのね、と感じる。東京でのサラリーマン生活にピリオドを打ち、故郷の博多に帰ってスコッチ・バーをオープンする。小説の中の話であるが、東京でもこの手のバーは運営していくのは難しいと感じる。相手がマニアックな部類に入る人たちなので、オフィシャルボトルでは満足せず、珍しいボトルを仕入れたところで数をさばけるわけでもなく・・・。まあ、固定費が最低限の条件でないと難しいでしょう。物語は親友の奥さん(それもかつて好きだった)が博多まで訪ねてくるところから流れが出来はじめ、いくつかの出来事とその心の動きが中心に描かれている。最後の部分に書かれているが、人を信じ切るのは難しい。愛する人であっても。