「どれくらいの愛情」 白石一文

どれくらいの愛情

どれくらいの愛情

まず装丁が良い。今まで本の装丁の良し悪しを気にしたことが無かったが、この作品の表紙の質感は何ともいえず、存在感がある。きっと音楽のジャケ買いのように装丁買いもあるかも知れない。
さて内容だが、中編4作から構成されていて、それぞれが考えさせられるというか、読み手に何かしらの「気づき」を与える作品である。「20年後の私へ」では主人公が短大時代の課題として提出した20年後の自分への手紙を、担当教授が本当に20年後に手紙と一緒に返す。もしこの手紙が来なかったら、安西の存在感や距離感は気がつかなかったのだろう。
「たとえ真実を知っても彼は」は気持ちは複雑。書かれていないが、事実を知った時の思いはその後の行動から想像がつく。他の2作品もきっと答えはないのだか、どんな答えでも「答えを出さない」という答えはなく、何らかの答えには正解/不正解という評価ではなく、結果をどう受け止めるかなのだろう。白石作品のテーマ。