「心に龍をちりばめて」 白石一文

心に龍をちりばめて

心に龍をちりばめて

久しぶりに気になる作家に巡り会った。ミステリーや恋愛小説といった括りではなく、人の心の動きを捉えながら物語が添加される。ブーメランが目の前で戻るようなギリギリのところで話が重くならない。
小さい頃の記憶は自分に都合が良いように解釈されていて、その後の出来事で記憶の間違いに気付いていく。主人公の美帆は誰からも羨ましがられる美貌を持ちながら、小さい頃の心の傷からその美貌を指摘されると過剰に反応し、目の前で自殺した(と思っている)母親の姿がトラウマになって、自分自身が母親になることに拒絶反応をする。美帆以外の人物が持つ心の傷とそれをどう消化するか、読みながら「納得」と「思考」を繰り返しながら最後のページを閉じる。もう少し白石一文を読んでみよう。