「冬の砦」 香納諒一

冬の砦―長編サスペンス

冬の砦―長編サスペンス

前回の「贄の夜会」に続いて香納諒一繋がり。主人公の設定が面白い。桜木は元警察官とはいえ、刑事ではなく制服警官としてパトロールや派出所勤務をし、偽証により懲戒免職になる。そんな過去に青少年時代の心の傷が桜木自身の思考を作り上げる。香納諒一の作品全般に言えることだが、人間の精神の構造や形成に経験がどう影響し、その後の行動にどう表れるかを表現している気がする。今回も事件によるPTSDと幼少の頃の過ごし方、恋愛が複雑に絡まっている。香納ファンには期待を裏切らない一作。