「蚊トンボ白鬚の冒険」 藤原伊織

蚊トンボ白鬚の冒険(上) (講談社文庫)

蚊トンボ白鬚の冒険(上) (講談社文庫)

蚊トンボ白鬚の冒険(下) (講談社文庫)

蚊トンボ白鬚の冒険(下) (講談社文庫)

暫く振り藤原伊織作品の紹介。この作品は今まで紹介してきたものとちょっと違ってユーモラスな雰囲気が常に感じられる。amazonのレビューを見ると散々であるが、私の中では満足しているし、こんな藤原作品があっても良いのでは、と思っている。藤原作品の特徴は登場人物の描き方と自然と感情移入を誘う文章力である。しかしこの作品はそれぞれの登場人物にキャラ設定はされているものの、今までのような丁寧さやそうなる理由が意外にない。だから不満に思うのだろう。でも、主人公の達夫と白鬚の切ない物語と思えば、これほど楽しめるものは無いだろう。そもそも蚊トンボの白鬚が達夫に入り込み、特別な力を出す、この設定次第が今までのような現実感がある物語とは違う。そんなことよりも達夫が白鬚と出会い、自分自身が変化し、次のステップに成長した時に白鬚の役割は終わった、と思えば、結構良く出来た物語ではないか。