「深淵のガランス」 北森鴻

深淵のガランス

深淵のガランス

この作品は単体でも成り立つが(当たり前だが)、冬狐堂シリーズを読んだ後に読むと楽しみが増える。そう冬狐堂こと宇佐見陶子の違った一面を感じることが出来る。それも冬狐堂とも宇佐見陶子とも出てこないが。
銀座で花師と絵画修復師の2つの仕事を持つ佐月恭壱が登場。生け花でもなく、フラワーアレンジメントでもない花師の仕事。店や客の雰囲気から然るべき花を然るべき形で創る。お金の問題ではなく、やりたい仕事をやりたい相手にだけ提供する。この部分だけでも十分に面白い展開になるのに、更に絵画修復師をプラスする。それも裏の仕事ではなく、表の仕事として。表と裏の両方を感じ、原作者以上の力が無ければ続けられない。こんな人物が登場して面白くないはずがない。北森作品新シリーズの幕開けである。