「サクリファイス」 近藤史恵

サクリファイス

サクリファイス

素晴らしい。こんな少ない文字数でこんなに感慨深い印象を与えるなんて・・・・。サクリファイス-「犠牲」と訳すにはもっと深い意味がこの物語にはある。トップでゴールすることだけが勝利ではないロードスポーツ、頭では理解していてもいざ自分で「アシスト」になれるかは難しいだろう。決してボールには触れないがチームには必要なアメフトの役割にも似ている。
分野は違うが読後の印象は野沢尚の「龍時」にも似ている。スピード感と心の緊張感が実にうまく表現されていて、その中にうまく表現できない恋愛感情を織り交ぜて。誓と香乃の間の本当に言いたい気持ちがなかなか言えず、結局自分の気持ちを曲げるところは多くの人が感情移入してしまう部分でもあるのではないだろうか。本当にお勧めの一冊である。