「ビット・トレーダー」 樹林伸

ビット・トレーダー

ビット・トレーダー

雑誌「Papyrus」に掲載されている時から楽しんでいた作品なので、「刊行されたら是非・・・」と思っていながら今になってしまった。雑誌掲載時のペンネームは「天樹征丸」、そう「金田一少年の事件簿」の原作者である。
主人公 矢部恭一は外車販売営業をしながらデイ・トレーダーであり、トレーディングの当初の軍資金は列車事故で息子を失い、支払われた慰謝料。やけくその投資は「当たり」を引き、もう一人の自分にのめり込んでいく。重たい経済小説とは違い、それほど株などの知識が無くても物語に引き込まれていく。恭一のシナリオ、妻 涼子のシナリオ、娘のシナリオが展開され、最後にゴールデンクロスを迎える。「金田一・・・」の原作者だけあって最後の部分は良く出来ていて、「お金の呪縛から解放」はもう一つのテーマともとれる。
個人的にはその後の矢部恭一の物語を読みたい。