そういえば

もう15年以上前になるが当時勤めていた会社の社長は盆栽に造詣が深く、自分自身が広報という仕事をしていたお陰で何度か盆栽町には足を運んだことがある。また清香園は必ず訪れる場所だった。20代前半の若造にとって盆栽の良し悪しなど分かるはずもなかったが、ただ理屈抜きに「良いものの良さ」は感じることが出来た。また会社とは別の場所、リラックスした状態で社長と直接話が出来たことは貴重な時間でもあった。
思い出されるのは、「盆栽を見るときには「樹」・「器(盆)」・「台」の三つを含めて見なさい」という言葉。当然、手入れをするのは「樹」なのであるが細部だけに拘っては駄目で、常に三つのバランスを考えることが必要だと。また「樹」が変化に合わせて「器」を替える。また今だけを見ていても駄目で、時間を越え、5年後・10年後のイメージを作った上で今すべきことをする。着眼大局着手小局である。
この社長はよくインタビューでこう答えていた。「なぜ盆栽をやられているか」という質問に、「盆栽を育てることは人を育てることや会社を経営することと同じである。未来をイメージして、今必要なことに手を差しのべる。盆栽は絵画などと違って所有するものはない。長い歴史の中のある一部分を担当しているだけある。たまたま今は私がそのタスキを預かっているだけである。」と。