「牛丼一杯の儲けは9円」 坂口孝則

久しぶりに嫌悪感をいだいた本だった。著者の購買担当経験から身近な商品の利益を導き出し、各企業の営業利益率と比べて理論の妥当性と展開。これは分かりやすく、同感な部分である。会社として利益を上げるために仕入れを見直し、ちょっとした工夫や努力で利益率を大きくするところも納得する。しかし購買側からの一方的な視点での話の展開は強引かつ幼稚な感がある。
実際のビジネスの現場でも同様の感覚を覚えることもある。仕入れには価格、品質、納期などの要素が含まれるが仕入れを行うモノのスペックを購買部門が決めることはほとんどなく(スペックそのものは各購買要求元が決めるであろう)、結果的に表面的な価格を中心にした交渉をせざるを得ない状況になる。一般に広く存在するような汎用部品のようなものであれば価格を中心としたアプローチでも問題が少ないと思うが、そうでないモノの購買は「総合的な価格」のような視野が必要に思う。その仕入れたモノを利用して発生した現象(不具合や事故を含めて)への対応力、安定供給性なども考慮すべきであると考える。
個人の意見として書かれた内容であればこうまで思わないが、「購買のプロ」を自称する立場で展開するには非常にお粗末な内容である。