「ラストソング」 野沢尚

ラストソング (講談社文庫)

ラストソング (講談社文庫)

予想はしていたけれど、やっぱり涙ぐんでしまった。読み終わった瞬間浮かんできたのは、レベッカの「Virginity」。

修吉、一矢そして倫子が紡ぐ日常と非日常。「スター(文章の中ではスタアと表現)を目指す」は音楽に触れた者の夢で、夢を実現させるためには「友達をきる」現実にも直視しなければならない。しかし、そんな人たちにも日常的な現実があり、生きていくためには何かしらで稼ぐ必要がある。

たまに昔のことを想い出し、あの頃大変だったことも今となっては何でもないことのように感じることが多い。主人公たちは20代前半で、「青春」という言葉からは若干ズレ始めた時期に思う。でも、「夢」に向かってチャレンジし続けることで生まれる創作物はきっとエネルギーの塊なんだろう。
そう言えば、かつての映画「就職戦線異状なし」の的場浩司のセリフでこんな言葉があった。「なりたいものじゃなくて、なれるものを捜し始めたらもう大人なんだよ・・・」って。一矢が唄うラストソングは「大人への一歩」なのかも知れない。

きっとこの物語は再映像化されることだろう。誰をキャスティングするのだろうか、楽しみである。