「香菜里屋を知っていますか」 北森鴻

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋シリーズ最終楽章。最初の「ラストマティーニ」から鳥肌が立った。「Beefeater」と「NOILLY PRAT」で作るマティーニ。とあるBARで「なぜBeefeaterをチョイスしたんですか?」という問いに、「Beefeaterを使いたいのではなく、NOILLYを使いたいからBeefeaterなんです」と言われたことがある。マティーニに向いたジンは「GORDON」だと思っていたのですごいショックを受けたのを覚えている。「Beefeater」で作るマティーニは作り手の力量がはっきりする。寸分狂わないパーフェクトなカクテルを出す熟練のバーマンが出す最後のマティーニに託された思いは哀しさを閉じ込めた一杯になった。
「香菜里屋」の謎が少しずつ明かされてくるにつれ、寂しさがどんどんと募っていった。この本のタイトルは決して登場人物の言葉ではなく、読み手が口にしてしまう言葉である。
「香菜里屋を知っていますか?」って。