「影絵の騎士」 大沢在昌

影絵の騎士

影絵の騎士

「B・D・T 掟の街」の続編。B・D・Tと呼ばれるボーダーレスなエリアで活躍していた私立調査員ヨヨギ・ケンは数年後にオガサワラで抜け殻のような生活をしていた。愛するエミィの死が彼をそうさせ、死の原因がケンを含む「ホープレス」と呼ばれる混血に発生する奇病(新宿病)であった。
新しい東京は東京湾に人工の島を浮かべ、そこには原子力発電所を設け、ハリウッドと並ぶムービースタジオや観光関連施設を整え、夢の島「アイランド」を作った。舞台はこのアイランドで繰り広げられる。

時代が近未来ということもあり、可能性半分+夢半分の設定に大沢氏のイメージが加えられた形で物語は進む。映画が復活を遂げ、テレビはコマーシャルベースのビジネスモデルから双方向型コミュニケーションによる広告モデルとなることは何となくイメージできるところである。映画そのものはCG化が進み、映画会社のスタッフの多くはCGエンジニアで、インドから来日している。今でもプログラム開発がインドや中国に移されていることを考えると強ち可能性が無くもないところである。
個人的には端末(TU)や室内での操作インターフェースに興味を持った。TUは何となく携帯電話の延長上で、電話の機能はもちろん、パーソナルIDとしても重要な機器になっている。部屋ではまるで機械と会話するような形で操作が可能である。携帯電話は今でもかなり近い線まできている気がする。